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Uniting Food, Farm and Hotel Workers World-Wide


2008年度第4回IUF-JCC運営委員会議事録(2008/3/28)

Posted to the IUF website 24-Apr-2008





全たばこ労働組合会議室で行われた標記委員会の報告を下記の通り致します。
(日 時)2008年3月28日(木)  第1部:15:10−17:05
第2部:17:15−18:10

(出席者)畑木、江森、山本、植田(フード連合)、徳田、大場、中野(UIゼンセン同盟)、
小川(全国農団労)、田上、岡田(サービス連合)、見里、高田(JCC事務局)
合計12名(敬称略)

報告事項
1. A/P農業会議報告

 標記会議が、2月17-18日にカトマンズ(ネパール)にて開催され、全国農団労小川書記長とJCC見里が出席した。2006年10月のA/P地域総会で部門別の活動強化を確認したが、今回はそれを受けたA/P地域における初めての農業会議となった。主な論議内容は以下の通り:
● 2006年12月のIUF農業部会(AWTG)総会で、米をIUFの活動の優先作物に取り上げる決議を採択して以降、今回初めて米/稲作に関する議論が行われた。これに関して、インドの小規模農家と土地なし農民を組織するPBKMS、全国農団労、IUFの三者が協力していくことを確認した。
● グローバル化の進展が農業にも大きな影響を及ぼしていることを共有し、これに対抗するために組合の組織強化と能力構築を如何に行うかが、本会議の重要なテーマとなった。
● 今年度ILO総会で農業に関する一般討議が行われることになっており、そこで取り上げるべき課題をA/P地域から提起することが、本会議のもう一つの大きなポイントであった。小グループでの討議を踏まえ、次の5点に集約した:@労働組合権、Aディーセント・ワーク、B安全衛生、C技能訓練、D完全雇用。

2. A/P HRCT会議報告
 標記会議が、2月20-22日にカトマンズ(ネパール)にて開催され、JCC見里が出席した。地域のHRCT会議は他産業部門に比べて活発な活動が行われており、今回は第8回目となった。主な論議内容は以下の通り:
● グローバル化の影響に関して、いくつかのテーマで加盟組織の経験共有が約2日間行われ、最終日は過去10年間の振り返りと今後10年を見据えて2つのテーマ(@脆弱な雇用への対応、A組合つぶし行為への対応)でグループ討議が行われ、それをもって会議のまとめとなった。
● 見里からは、「サービス連合の組織化戦略」と「プライベート・エクイティ・ファンドの事例(東急観光)」に関する、2つのプレゼンテーションを行った。
● フィリピンのNUWHRAINより、ホリデー・イン・マニラにおける基本的労働権に関わる争議について、同労組からの要請により決議文を採択した。

3. A/P女性委員会報告
 標記会議、2月25-26日にカトマンズ(ネパール)で開催され、UIゼンセン同盟の中野国際局部長が出席した。オーストラリアLHMUの女性委員会委員長が今回も欠席し、中野氏が議長を務めた。主な論議内容は以下の通り:
● 今後の活動計画として、@不安定な雇用(非正規、パート、契約、請負、派遣など)に関する各国の取り組み事例の情報収集・交換、A女性指導者の育成に向けた地域レベルでの特定テーマの設定のための作業グループの設置、B主要多国籍企業における男女平等に関する規範に関する情報収集と今後に向けた協議、の3点に関して議論した。
● IUF男女平等マニュアルの活用に関して、グループ討議を行った。
● 議長(太平洋小地域)の辞任に加え、インド(南アジア小地域)が欠席し、4つある小地域で2つの小地域の女性委員しか出席しなかったことを受け、今後の女性委員会のあり方を議論する必要がある。女性委員会議長は地域委員の女性枠での正委員となるが、過去6年間出席していないことも含め、次回の地域委員会で論議する方向で調整する。太平洋地域選出の女性委員(議長)の後任は、同じ組織のLHMUから選出される模様。

4. 連合/OECD-TUAC共催シンポジウム報告
 標記会議が、2月25日に都内ホテルで開催された。連合およびOECD-TUACの他、組合組織からはITUC-AP、GUF日本協議会メンバー、政府および国際機関からはOECD本部、ILO、外務省、厚生労働省、ドイツ労働社会省、使用者団体からは日本経団連の代表が出席した。JCCからは見里が出席した。シンポジウムで確認された主なポイントは以下の通り:
● OECD多国籍企業ガイドラインは完璧からは程遠いが、ILOの関連文書とともに権威があり有効なツールであり、認知度を高めて活用していくことが重要である。
● 中国からの投資や政府系ファンドの伸張、中国国内課題を踏まえると、中国への同ガイドラインの適用が今後の重要な課題となる。
● 日本の窓口であるナショナル・コンタクト・ポイントが内外からの期待に沿った機能を発揮するには、政労使の三者構成にすることが望ましい。現在、政府内で検討が開始された。

5. 海外労働学校参加者・プログラム詳細
 海外労働学校の参加者は募集の結果、フード連合から20単組27名、UIゼンセン同盟から1単組1名、全国農団労から1単組2名、サービス連合から1単組1名の計31名の一般参加者(内女性4名)と、事務局から見里の、合計32名の団で開催することとなった。
 プログラムに関しては、現在最終調整中であるが、別紙のようなカリキュラムを予定している。

6. IUF会費およびA/P地域活動基金納付状況報告
 前回の運営委員会にて、1スイスフラン99円、1オーストラリアドル96円の為替設定をご承認いただき、各組織からIUF会費および地域活動基金を徴収させていただいたが、その後スイスフランに対しては円安、オーストラリアドルに対しては円高に振れた。3月に入り為替動向を見極め、3月18日に送金手続きを行ったが、最終的な為替レートは1スイスフラン99.86円、1オーストラリアドル91.19円となり、合計で23,450円の為替差損となった。日本事務所内規により、為替差損はIUF日本事務所口座会計で吸収する。

7. NGOとの協働
(1) NGO-労働組合国際協働フォーラム

● 4月26日(土)の中央メーデーに、児童労働、HIV/AIDS、教育の3グループで2つのテント、母子保健グループでひとつのテントでイベント参加する。HIV/AIDSグループでは、恒例のレッドリボン・イベントを行うので、リボンの作成および当日のイベント参加を要請する。
● NGO-労働組合協働の事例報告会を、6月23日に実施することが決まった。
● 6月12日の「児童労働反対世界デー」に合わせたイベントをNGO-労働組合国際協働フォーラム、児童労働ネットワーク、ILO駐日事務所の三者共催で6月8日(日)に国連大学にて開催する。三者による検討会議を開催し、今年のILOが定めた児童労働のテーマである教育に関係するドキュメンタリー・フィルムの上映と、専門家によるパネルディスカッションで構成する。女優の酒井美紀さんのスピーチも予定している。
(2) 児童労働ネットワーク(CL-Net)
● 上記の三者共催のイベント以外に、5月1日〜6月30日の2ヶ月間をCL-Netのキャンペーン期間として、協賛団体を募り一般市民への意識喚起活動を行う。現在、CL-Net運営委員会が中心となってキャンペーンの企画の最終的な詰めを行っている。

8. 争議支援・連帯活動
● トルコのヨルサン乳業が、組合脱退に応じない従業員400名の解雇による基本的労働組合権侵害、違法な「見習い」の使用による同国労働法違反を行っており、TEKGIDA-Isは4ヶ月に渡って組合員の権利を求めて闘ってきた。同社に対して抗議文を送り、組合との協議を求めた。(2月12日)
● イランで不法に投獄されている労働組合リーダー(バス労組および製パン労組)の釈放を訴える3月6日のグローバル・アクション・デーに合わせ、イラン大統領宛に基本的労働組合権遵守を求める要請文を送った。(2月21日)
● イギリスの小売業者マークス&スペンサー(M&S)に食肉を供給する精肉労働者の労働条件は劣悪であり、T&Gが実施するM&Sに対する精肉労働者の平等な取り扱いを求めるキャンペーンを支援し、同社に対し社会的責任として法令遵守に留まらずにサプライヤーに対して行動を起こすよう求める要請文を送付した。(2月28日)
● アメリカのRedcoフーズ社は、2007年7月に労働協約が失効したのを機会に、新規採用者に対して組合が長年にわたり勝ち取ってきた労働条件を適用せずに、低い労働条件を押し付けてきた。これを受けて組合がストライキを行ったが、同社はスト破りを導入し、組合との交渉を拒否した。同社CEOに対し、組合との交渉に応じるよう求める抗議文を送付した。(3月11日)
● ロシアのネスレ・パーム工場で、労働者約1,000名が賃金交渉を4ヶ月に亘り求めているが、賃金は団体交渉事項ではないとして拒否されている問題に端を発する争議を支援し、ネスレ本社の人事担当副社長宛に本争議を早期に解決するよう求める要請文を送った。(3月24日)

9. 各組織報告
フード連合
:春闘状況3月28日現在48組合が妥結しており、加重平均5,297円(1.79%)、単純平均で4,830円(1.77%)となっている。また賃金改善は24単組で724円を獲得した。割増率は3単組で具体的な成果を挙げている。パートの労働条件交渉は一部の組合で、時給アップ、半日休暇制度の改善、割増率の正従業員と同様の取り扱いなどの成果をあげている。円高、原料価格高が影響し、厳しい交渉となっている。また、中国冷凍餃子の農薬混入事件の影響で、冷食各社の売り上げは約3割減と厳しい企業環境化での春闘となった。
● サッポロビールは本日(3月28日)の株主総会で、また新たな敵対的買収に対する防衛策を提案し、承認を得た。これに先んじて、サッポロ関連労組協議会が声明を3月6日に発表し、フード連合もこの声明を支持する事務局長談話を発表した。
● JTの中国産、冷凍ギョーザの農薬混入事件に関連して、本日付で関係者の処分を発表する。会社は弁護士とも相談の上、年度内の処分を決めた。明日(3月29日)の新聞で公表される予定。
UIゼンセン同盟:春闘妥結状況27日現在、282組合で妥結に至っている。定昇込みで、単純平均6,384円(2.37%)、加重平均6,601円(2.31%)。賃金引上分が、単純平均1,093円(0.41%)、加重平均1,015円(0.35%)。フード・サービス部会では42単組の妥結で、定昇込みで、単純平均7,050円(2.59%)、加重平均7,182円(2.64%)。賃金引上分が、単純平均1,626円(0.63%)、加重平均1,481円(0.57%)。パートの賃金引上げは、全体52組合で16.3円(約2%)、フード・サービス部会では9単組で39.7円のアップで、昨年より3.3円高い引き上げ額を得た。
全国農団労:春闘は、3月24日を回答指定日として取り組んできた。昨日(3月27日)現在で、30単組で妥結しているが、その内8単組でベースアップを勝ち取った。平均引き上げ額は現在集計中。また、1単組で臨時職員の正職員への登用を制度化した。
サービス連合:ホテル産業の業績は今年1月まで調子良かったが、それ以降株価の低迷や米サブプライム問題などが影響して稼働率がダウンしている。春闘の交渉は3月いっぱいでの終結を目指しているが、現時点では大手の4単組のみが回答を引き出している。昨年水準の維持確保程度の結果である。ヒルトンではアメリカからの支配人が交代したため、春闘とは何かという説明からやり直さなくてはならない状況が発生している。また、政策制度要求として、裁判員制度の有給休暇化をはじめ66件を要求項目に入れている。
論議:連合の食品部門連絡会議で、食品の安全・安心問題を取り扱っているが、中国ギョーザの件が、同国のチベット問題やオリンピックなどの別の話題によってうやむやすることなく、事実関係を解明するようはっきりと意思表示する必要がある。IUFのような国際レベルの機関で、こうした国際関係が絡む問題に対応してもらえるといい。

10. 今後の予定
● HRCT三役会・委員会:4月9-11日、セゴビア(スペイン)
● UNI/IUF共催ディズニー会議:4月15-17日、香港
● 女性委員会:4月15日、ジュネーブ
● TWTG委員会:4月16日、ジュネーブ
● 三役会:4月16日、ジュネーブ
● 執行委員会:4月17-18日、ジュネーブ
● JCC三役会・第5回運営委員会:4月25日、味の素労働組合会議室

11. その他
● 3月6日、スティール・パートナーズによるサッポロ・ホールディングスへのTOBに対し、フード連合加盟のサッポロビール労組と関係労組によるサッポロ関連労組協議会が反対する声明を発表した。同日、フード連合が事務局長談話を発表し、サッポロ関連労組協議会によるTOB反対の姿勢を支持した。IUFはファンドによる買収関連ニュースを扱う専門ホームページの「買収ウォッチ」と、アジア太平洋地域の「アジアン・フード・ワーカー」に関連記事を掲載した。
● 3月1日より、A/Pのスタッフとしてリム・ヒューインが就任した。中国系マレーシア人で、オーストラリアへ移住した女性で、英語、北京語、マレー語を話せる。女性活動やプロジェクト活動を担当する。
● 男女平等マニュアル「みんなは一人のために、一人はみんなのために:ALL for ONE, ONE for ALL」を発行し、各組織に配布した。
● IUF砂糖活動への非公式な支援要請に関して、JCC国際連帯基金の使用の可能性を今後議論する。
● 連合からのプリンス・ホテルの使用差し控え要請を受け、IUFホームページ上にある問題があるホテル一覧表である「グローバル・ホテル・モニター」にリストアップした。アメリカ、マレーシアのプリンス・ホテルに関しては、当該ホテルの組合の有無を含め、両国のIUF加盟組織との調整が必要であり、扱いを本部に投げている。
● 連合「日系多国籍企業の労使関係に関する二国間セミナー」が、フィリピンにて8月25日の週に開催予定。
● ビルマの民主化と人権を求める集会の案内:4月6日、青山学院大学
● ビルマ民主化支援上映会「映画:ビルマ、パゴダの影で」、4月24日、連合2階203会議室
● 雑誌記事配布「“改札口”を通すほど『職の安全』は高まる」

協議事項
1. IUF執行委員会に向けて

 4月17-18日にジュネーブで開催される執行委員会に向けて、JCCとしてのスタンスを協議した。
(1) グローバル・ユニオン協議会に関して
グローバル・ユニオン協議会の事務所経費として約4万スイスフランの拠出を求められていることに関して、今回の執行委員会でIUFとしての対応を決めることになる。日本の加盟組織として、どのようなスタンスで臨むか協議した。前回の運営委員会(1月31日)の宿題として、各組織で議論してきた内容は以下の通り:
● フード連合:2月22日の国際委員会で議論したが、結論として執行委員会の議論を見極める必要性から、執行委員会メンバーに判断を委ねることとした。
● サービス連合:ITFとの整合性が課題であったが、ITF側ではこの件の論議がされていない。現状でもそれなりの活動ができている中で、屋上屋のような組織運営に資金拠出する必要性に疑問を感じるが、IUF全体での議論を尊重すべきと考え、執行委員会メンバーに一任したい。
● UIゼンセン:基本的には積極的に参加すべきと考えているが、5つのGUFに加盟しているので、資金的には考えなくてはならない。運営資金の22万ユーロの内、14万ユーロは人件費なので、兼務の職を検討するなどの交渉の余地があるのではないかと考える。執行委員会のなかで議論するので、そこでまた意見を出していただきたい。
● 農団労:特に組織内で議論をしていない。議長の判断に従う。
昨年の三役会では、全体的に新たな資金拠出は容認できないという論調であったので、今回の執行委員会で再度協議することになっている。必要なら資金拠出もありえるが、まだこの案は粗っぽいとの印象を受ける。予算組みを考えるには議論が必要であり、IUF執行委員の畑木と徳田が議論に参加するので、最終的には両人の判断にゆだねることを運営委員会として決議した。

(2) 産業別の課題について
産業の課題として、「フードマイル」、「バイオ燃料」などが挙げられている。また、過去1年間で日本でも大きな課題として浮上した「プライベート・エクイティ・ファンド」への対応も論議テーマに挙げられていることから、これら個々の課題に関して、日本として意見表明する必要はないか協議した。
現実に穀物価格の高騰が、日本でも産業の大きな課題となっているが、途上国の貧困な社会を考えると重要な課題であると認識する。いくつかの課題は連合の重点政策にも盛り込まれており、この議論に日本からも積極的に貢献する必要があると考え、各産別組織でポイントをまとめ、翌週末の4月4日までにJCC事務局に提出することを確認した。これらの意見はJCC見里がまとめ、執行委員会メンバーに委ねる事となった。

(3) その他
本執行委員会のタイミングで、日本の加盟組織として意見表明すべきことはないか検討した。JCC事務局から提起した、中国の農薬入り冷凍ギョーザに端を発する食品テロへの懸念に関して意見表明に関しては、ギョーザ問題と食品テロを直接結び付けるべきではないとの指摘より、食の安全の確保のための課題提起とすることとした。ポイントは次の2点:
● 中国に対するノーコンタクト政策の限界を提起する。中国の食品関連産業労組との正式なコンタクトがあれば、組合ルートでもこの問題の調整が可能であったかもしれない。食品のグローバル・サプライ・チェーンを考える時には、既に中国は無視できない存在であり、組合としても関与していく必要が高まっている。ITUCのガイ・ライダー書記長も、先の来日の際に連合高木会長の手配で、日本で総工会の代表と非公式な会合を持っている。IUFのノーコンタクト政策の見直しも必要である。
● 食のサプライ・チェーンが益々グローバル化していく中で、国境を越えた食の安全確保体制をどう構築するかが喫緊の課題となっている。IUFとしてこの課題にどう対応するか、議論すべきである。

2. 6月のセミナーに関して
6月のハンス・オルフ・ニルソンIUF会長の来日に合わせて、6月13日に「ワーク・ライフ・バランス」をテーマとしたセミナーを実施する。セミナーは、先進事例としてのスウェーデンの話を聞くとともに日本の状況と課題を専門家から聞く基調講演の部と、パネルディスカッションの部の2部構成とする。本運営委員会で、講師やパネルディスカッションのモデレーターおよびパネリストの人選、プログラム案が承認された。

3. パシフィック・ビーチ・ホテル(PBH)労働争議支援に関して
 ハワイのPBHで組合承認をめぐり、あからさまな組合つぶし行為が行われ、労働争議が起きていることに関し、同ホテルを組織している全米港湾倉庫労組から同労組が加盟しているITFの東京事務所を通じて支援要請があった。連合に対してもAFL-CIOから支援要請があったことから、3月10日に連合、ITF東京事務所、ITF-JC、全国港湾労協、IUF-JCCで対策会議を持った。既に、ホテル経営に対する抗議文をIUF-JCCおよびサービス連合から送付しているが、同ホテルのボイコットへの賛同を求められている件で、対応を運営委員会で協議した。
 基本的に本争議を支援することは良いが、ITF東京事務所という友好組織からの要請だけではなく、アメリカから日本への一方的な支援要請をきちんと交通整理すべきとの指摘があった。また、ホテル産業におけるIUF加盟組織のUNITE HEREとの関係整理が確認できていないことから、IUF本部からの要請や、連合でボイコット賛同を決めた時点で、JCCとして賛同を決めることを確認した。このことは、3月31日に予定されている、次回のITF、連合、IUF-JCCによる対策会議でJCCから両組織に伝えることにする。

勉強会
「OECD多国籍企業ガイドラインと日本の課題」:連合国際局次長 野木正弘氏
1. OECD多国籍企業ガイドラインとは?

● OECDが定義する「企業名は足すべき社会的責任」を網羅したものであるが、最終責任を政府が負うことから、各企業が自主的に定める行動規範とは根本的に位置付けが異なる。
● 企業活動のあらゆる側面をカバーしている:「情報開示」「雇用及び労使関係」「環境」「収賄防止」「消費者利益」「科学及び技術」「競争」「課税」。
2. ガイドライン策定の経緯
● 1970年代に企業のなりふり構わぬ行動が国際社会で問題視され、1976年にOECDガイドラインが策定された。しかし、OECD加盟国以外で適用されず、途上国で企業誘致のために人権や環境などの問題で再度批判が高まった。こうしたことを背景に、2000年にガイドラインが改定された。
3. ガイドライン実施手続き
● 改定されたガイドラインの特徴は、OECD加盟国以外の適用を盛り込んだ点と、紛争解決の手続きが定められた点にある。全てのOECD加盟国政府は、窓口となる「ナショナルコンタクトポイント(NCP)」の設置が義務付けられ、NCPに持ち込まれた案件の協議・調整結果は、OECDの多国籍企業委員会(CIME)に報告され、OECD総会での審議を経て公表される。
4. 問題点
● NCPのパフォーマンスは、各国のNCPの力量や政治的意志に左右され、国際法のような強制力を持たないといった限界がある。
● 日本のNCPは、アメリカと韓国のNCPとともに、「三大機能不全NCP」と海外労組から批判されている。
5. 最近の動き
● 2007年のドイツ、ハイリゲンダム・サミットでのG8労働大臣会合で、OECDガイドライン体制の強化が求められたが、今年は日本でG8サミットが予定されており、日本政府にとってはプレッシャーになっている。
● 2008年2月に実施した連合/OECD-TUAC共催シンポジウムで、日本政府から「NCP強化に向け、NCP三者構成化を検討中」との発言を引き出した。
● 今年6月に、サミットのフォローアップの一環として、OECD/ILO協働シンポジウムが予定されている。OECDガイドラインとILO三者宣言の連携、シナジー効果の追及がテーマとなる。
6. 連合の取り組みと今後の進め方
● 基本的には紛争は当該労使間で解決されるべきであるが、労使交渉が暗礁に乗り上げた案件の解決に向けて、OECDガイドラインに定められたNCPが突破口となりうる。ナショナルセンターの連合の役割も重要である。
● NCPの強化及びガイドラインの普及に向けて政府への働きかけを強めるとともに、東南アジアで実施する二国間多国籍企業セミナー(今年はフィリピンを予定)で、アジア諸国への普及を図る。
7. 質疑
● アジアでの取り扱い事例が多いのは、実際にアジアで問題が多く発生しているということの他に、OECDガイドラインの周知が他地域に比べて進んでいることもある。これには、連合が二国間多国籍企業セミナーで普及に取り組んでいることと、ITUC-APも多国籍企業セミナーを実施していることが要因であると考えられる。
● マクドナルドで労使交渉が事実上機能しないことや、組合への嫌がらせが起きていることを、アメリカのNCPに提訴することも問題解決の一策として検討する余地がある。
● プライベート・エクイティ・ファンドに関しては、OECD-TUACも昨年3月と1月にシンポジウムで取り上げている。連合もこのシンポジウムに参加していることに加え、イギリスへ視察を行っている。これは報告書があるので、ご参照いただきたい。

以上