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Uniting Food, Farm and Hotel Workers World-Wide


2008年度第3回IUF-JCC運営委員会議事録(2003/1/31)

Posted to the IUF website 08-Feb-2008





味の素労働組合会議室で行われた標記委員会の報告を下記の通り致します。
(日 時)2008年1月31日(木)  第1部:15:05−16:50
               第2部:17:05−18:10
(出席者)畑木、山本、植田(フード連合)、徳田、大場、中野(UIゼンセン同盟)、     小川(全国農団労)、田上、井土、岡田(サービス連合)、
     見里、高田(JCC事務局)
     合計12名(敬称略)

会議冒頭、2008年最初の運営委員会に当たり、畑木議長より挨拶があった。日本の食品産業全体で「食の安全・安心」回復を進める中で起きた、中国「天洋食品」製造の冷凍餃子の農薬汚染に関して、遺憾の意が表明された。

報告事項
1. NGOとの協働

(1) NGO-労働組合国際協働フォーラム
● 4月26日(土)の中央メーデーに、例年通りテント出展することを確認した。今回は、新たに教育グループが加わるが、国際協働フォーラムとして2つのテントを出展することとなる。母子保健グループが電機連合と別途テントを出展予定であることもあり、スペース的には広くなる。内容が決まり次第、各産別組織にご案内および協力の依頼を発信する。
● NGO-労働組合協働の事例報告会を、4月の21日の週に開催する予定で調整中。
● 6月12日の「児童労働反対世界デー」に合わせたイベントをNGO-労働組合国際協働フォーラム、児童労働ネットワーク、ILO駐日事務所の三者共催で6月8日(日)に国連大学にて開催する。現在、三者による検討会議を開催し、内容を詰めている。テーマは「教育と児童労働」とする。
(2) 児童労働ネットワーク(CL-Net)
● 上記の三者共催のイベント以外に、5月1日〜6月30日の2ヶ月間をCL-Netのキャンペーン期間として、協賛団体を募り一般市民への意識喚起活動を行う。また、今年はアドボカシー的要素(対政府、対企業)を盛り込んだキャンペーとすることが確認されており、現在コンセプトをCL-Net運営委員会にて詰めている。

2. 争議支援・連帯活動
● 韓国の移民労働組合(MTU)の幹部役員が警察に逮捕され、本国に強制送還された。また、同労組の登録拒否を違法とした2007年2月の高等裁判所の裁決に対し、韓国政府が控訴していることを受け、国連が定めた「国際移民デー」(12月18日)を機にMTUへの連帯文と、韓国政府への抗議文を送付した。(12月30日)
● 世界展開しているイスラエルの「コーヒー・ビーン」で従業員が労働組合権を要求し組合結成に向けて動き出したところ解雇された。同国ナショナルセンターのHISTADRUTが司法に訴えたが、同社は労働協約交渉を拒否し、従業員に圧力をかけているため、1月22日からストライキを実施している。同社経営に対し抗議文を送った。(1月28日)

3. 各組織報告
フード連合
:JTフーズが輸入・販売した中国「天洋食品」の冷凍餃子の農薬汚染とそれによる健康被害事件に関して謝罪表明があった。事実関係は、関連加盟組織と連携して把握に努めている。
● 春闘に関しては、1月28日に中央委員会開催し方針を組織決定した。賃上げ、一時金、企業内最低賃金、時短、パートの処遇改善の5点について、地域組織と業種別部会という縦軸と横軸での会合で確認・徹底していく。
● 1月29日の午前、日豪EPAに関する勉強会を参議院議員会館で行った。現在、フード連合として食糧貿易に関する一貫した方針はないが、広く学習・理解するための機会として実施した。
UIゼンセン同盟:1月24日に中央委員会を行い、賃金、時短など、総合労働条件改善労働条件の改善の方針を組織決定した。これを受けて、フード・サービス部会は28日に部会決起集会を行い、賃上げに関して昨年と同じ方針で取り組むことを確認した。ガソリンを含む原料の価格アップがアゲンストの風となるが、働く者の条件を改善するという立場で春闘に臨む。賃金体系の有る組合と無い企業をグルーピングし、@賃金体系の有る企業:定昇+1%(2,500円)、A体系のない企業および定昇原資1%以下の企業:3.5%または7,500円以上を要求する。パートはABCの3グループに分けて、○A正社員と同等の賃金体系がある企業:35円以上、○B正社員とは違うが賃金体系はある企業:25〜35円、○C賃金体系がない企業:25円の時給アップを要求する。妥結の期日設定は4つのグループ(A:3月12−13日、B:3月18日、C:3月末、D:3月内決着が難しい組合)に分けて、それぞれの目標に向けて取り組む。時間外割増に関しては、連合の設定した目標には届かないが、時間外:35%、休日:45%、深夜:35%を全ての組合で達成を目指す。特に、サービス部門の労働時間が過度であり、残業時間の削減を図る。1月30日には、フード・サービス部会の労使会議を行い、約250名が出席する中で、経営側にUIゼンセン同盟の春闘の取り組みを説明した。城島氏に出席していただいた。
全国農団労:1月11−12日に農協販売担当を集め、メーカーから見た農業の課題について、ニチレイから講師を招きセミナーを開催した。フード連合ニチレイ労組に感謝する。
● 春闘方針に関して新都ホテルで討論し、1%を基本とする賃上げ要求方針案を作成した。また、パートの待遇改善を要求する。時短に関しては、割増率の増加を要求する状況にはなく、当面は不払い残業の一掃と、休日出勤時の振替え休日の完全実施を目標とする。2005年に厚生年金と統合した農林年金であるが、3階部分の清算に現状だと後30年掛かると試算されている。一時金による早期清算を要求する。また、日本の農業のあり方に関する政策要求も盛り込み、2月8−9日の中央委員会で組織決定する。
サービス連合:1月25日に中央委員会を開催し、春闘方針を組織決定した。今年は、0.5%を中心に賃金改善に重点を当てる。また、非正規社員の待遇改善として、時給20円以上を要求する。一時金、企業内最低賃金、総実労働時間の短縮(1800時間)にも取り組む。その達成のためには要員要求も合わせて行うが、労使での調整が必要であり、労使委員会設置を提案する。2009年から裁判員制度の開始にあわせ、企業の社会的責任として裁判への出席に便宜を図る裁判員休暇制度の設置を要求する。その他、子育てや介護を考慮した男女平等社会のための施策や、60歳以降の雇用確保などを盛り込む。観光部門はまだ業績が回復していないものの、ホテル部門は都心部を中心に稼働率が向上したことによって部屋単価がアップし、春闘に対して追い風となっている。2月末までに要求を提示し、3月内決着を図っていきたい。

4. 今後の予定
● 海外労働学校募集:2月1〜29日
● A/P農業会議:2月17〜18日、カトマンズ
● A/P HRCT会議:2月20〜22日、カトマンズ
● A/P女性委員会:2月25〜26日、カトマンズ
● ITF/IUF合同漁業・水産加工 第1回運営委員会:3月4〜5日、ロンドン
● 国際女性デー:3月8日
● 第8回コカ・コーラ/IUF協議会:3月10〜11日、アトランタ
● JCC三役会・第4回運営委員会:3月28日、味の素労働組合会議室

5. その他
● 雑誌記事配布「進化するEU農業の守備力と攻撃力」
● 雑誌記事配布「アジアまでも席捲するEUスタンダード」
● チラシ配布「写真展ビルマ2007」
● チラシ配布「映画:ビルマ、パゴダの影で」
● マクドナルドの直営店店長による、店長は管理職には当たらず残業代を支払うよう求めていた訴訟で店長が勝訴したことに関する、時事通信発信記事、関連組合(日本マクドナルドユニオン、連合、東京管理職ユニオン)声明、厚生労働大臣談話、日本経団連会長・副会長コメントの配布

協議事項
1. 2008年度IUF会費およびアジア太平洋地域活動基金に関して

 2008年度のIUF会費は2.40スイスフランであるが、為替レートを99円/スイスフランに設定した。また、0.4オーストラリアドルの地域活動基金に関しては96円/オーストラリアドルに為替を設定した。以上のレートで計算された各加盟産別組織の金額は下表の通りであるが、運営委員会で承認された。 IUF日本事務所への送金は2月までとし、3月中に本部および地域事務所への送金手続きを行う。
組織名 会費(\) 地域活動基金(\) 合計金額(\)
フード連合 22,334,400 3,609600 25,944,000
UIゼンセン同盟 11,880,000 1,920,000 13,800,000
全国農団労 2,970,000 480,000 3,450,000
サービス連合 2,613,600 422,400 3,036,000

2. 国際連帯基金の使用に関して
ビルマ亡命労働組合ナショナルセンターFTUBがタイ国境の街メソトに強制移住させられた労働者の子どもに対する学校プロジェクトを、日本の労働組合(自治労、UIゼンセン同盟、日教組、NTT労組、IUF-JCC:5組織合計100万円)が2005年より支援してきた。今年も4年目となる同プロジェクトを支援し、IUF-JCCの負担分20万円を国際連帯基金より拠出することが事務局より提案され、承認された。

3. 香料ジアセチルをめぐる安全衛生問題の対応に関して
前回JCC運営委員会の決定に基づき、日本香料工業会、厚生労働省、食品安全委員会のヒアリングを行った。ヒアリング結果は以下の通り:
● ジアセチルは主に発酵工程を通じて、酒類や乳製品から肉類まで幅広く、多くの食品に存在する。いくつか例を挙げると、醤油、納豆、酢、味噌、酒、漬物などの日本の伝統的食品などもジアセチルを含有する。
● 食品安全委員会によると、より危険な劇薬が厳格な使用量規制の下、食品添加物として認可されている。しかし、ジアセチルは日本では食品添加物として長年使用が認められ、摂取した場合の安全性も確認されているので、安全性の観点からの使用量の規制はない。
● 合成であろうと天然であろうと、純粋な化学物質としてのジアセチル(2,3-ブタジオン)の特性に差異はない。唯一の違いは化学物質としての濃度であると考えられる。天然のジアセチルは食品内に低濃度(通常0.38〜28ppm)で存在するが、合成のジアセチルはより高い濃度で存在し得る。
● 健康上の問題は、高濃度のジアセチル蒸気に長期に亘って曝露することに起因する。日本香料工業会の推定では、アメリカの電子レンジ用ポップコーン工場のミキシング工程でのジアセチル濃度は5%に達する。開放系でジアセチル蒸気を発するこの工程で、労働者は高濃度のジアセチルに曝露する。しかし、これは非常に特殊な環境であると考えられる。
● 電子レンジ用ポップコーンは日本では製造されておらず、アメリカからの輸入品の販売のみである。アメリカの電子レンジ用ポップコーン製造ラインと異なり、日本の食品製造ラインのほとんどは密閉ラインである。
● アメリカはEUや日本と比べて、非常に多くのジアセチルを製造・使用している。日本香料工業会によると、アメリカは毎年96.2トンの合成ジアセチルを製造しているが、EUの製造量は17.5トン、日本は1.6トンである。言い換えると、アメリカはEUの5.5倍、日本の60倍のジアセチルを製造していることになる。一人当たりの一日の摂取量では、アメリカは8,000マイクログラム、EUは3,300マイクログラム、日本は480マイクログラムである。

この結果を受け、以下のような対応をとることを運営委員会として決定した:
● JCC加盟組織の単組に対し、労働者が高濃度のジアセチルに曝露する可能性があるプロセスがないか、職場点検を行うよう要請する。
● もしあれば、労使の安全衛生委員会の場で改善を求める。
● 当該プロセスが改善されたことを確認する。
● 以上の要請に従って対応した組合は、JCCに報告する。

4. 第32回海外労働学校募集要項に関して
第32回海外労働学校を、5月21日から6月1日の12日間、スイス(ジュネーブ)およびオランダにて開催する。プログラム案は別紙の通り。参加費は参加人数が26〜30名の場合は42万円、参加人数が31〜35名の場合は40万円とする。一単組当たりの派遣上限は2名とし、極力女性を派遣いただくよう調整する募集要項を承認した。応募は2月29日(金)を締め切りとする。

5. 6月セミナーに関して
 6月13日(金)午後、「ワーク・ライフ・バランス」をテーマにしたセミナーを開催する。詳細は今後詰めていくが、講師としてIUF会長のスウェーデン食品労組のハンス・オルフ・ニルソン会長を招聘する。また、同労組国際局長で北欧食品労組協議会事務局長のパウリ・クリスチャンソン氏も招聘する。両氏は6月11〜18日の日程で日本に滞在する方向で、現在調整している。

6. その他
● 次回の運営委員会で4月17−18日開催予定の本部執行委員会であげられるテーマを協議する。具体的にはグローバルユニオン協議会への資金拠出が課題として挙げられている。JCC事務局から事前に関連資料を加盟組織にお送りするので、次回までに各加盟産別の中でご検討いただきたい。

勉強会
「中国労働契約法の改正ポイントとその影響」:労働政策研究・研修機構(JILPT)野村かすみ主任調査員
 中国労働契約法改訂の背景

● 1978年の改革開放政策による社会主義市場経済の導入、ケ小平による「先富論」などによって、中国社会は伝統的な共産主義から大きく舵を切った。1953年からスタートした「五ヵ年計画」によって経済成長を果たしてきたが、現在は第11次五ヵ年計画の期間に当たり、2006年11.1%、2007年11.4%の高い実質GDP成長率を記録しており、「世界の工場」「世界の市場」として大きく発展を遂げている。
● こうした経済発展は、農村からの出稼ぎの農民工が支えているが、農民工の低い労働条件や権利など、農民工の搾取の状況が国際機関や海外のNPOから非難されてきている。特に2008年8月の北京オリンピックや、2010人5月の上海万博に合わせたキャンペーンなどが中国政府への圧力となっている。
● 農村労働者人口は都市労働者人口の倍おり、特に40−50代の再就職を中心とした農村の失業対策が社会問題となっている。その解決方法として、第11次五ヵ年計画の中で農民工としての脱農業・都市化が課題となっている。
● 一方で、国有企業から外資を含む民営企業の進出によって、それまで中国にはなかった労使関係が出現するとともに、「固定工」から契約労働者化がはじまり、法的な整備が必要となっていた。こうしたことから1980年に個別労使関係による契約制度が導入したがうまく機能しなかった。1994年には「労働法」が成立し、労働契約と集団協約が定められている。
● 「労働法」による労働契約制度の弊害を是正する必要が出てきた。これは、企業による試用期間の乱用、契約期間の短期化、違約金の乱用などがあったことと共に、労働者派遣業にライセンスがなく誰でも参入でき、搾取的派遣が横行していることなどがあげられる。また、雇用形態の多様化や、労使争議の増加も背景としてある。
中国労働契約法改訂のポイント
● 2005年12月までに草案がまとめられ、中国では非常に珍しい例であるがアメリカに倣って2006年3月にはパブリック・オピニオンを募集した。中華全国総工会は草案の初期からかかわってきた。2007年6月の全人代で可決され、2008年1月より施行されている。
● 主な特徴は以下の通り:@就業規則の機能強化、A使用者の勤務条件の告知義務、B労働契約の書面化、C労働契約期間の短期化(一定期間以上は正規従業員にしなくてはならない)、D試用期間の乱用改善、E職業選択自由の保護、F競業の禁止、G派遣労働者の保護、H派遣元事業者が法定使用者として労働者への義務を負う、I派遣元と派遣先の法定責任の明確化。
中国労働契約法改訂の影響と課題
● 全体としては労働者の権利を拡大し、保護を強化する法律であるが、法律の全国展開に課題がある。省政府への波及や管理サービスがどこまで徹底できるか疑問視する声が多い。全体的には、しばらく様子を見てからでないと評価できない。
● 労働契約期間の短期化によって、従来の短期契約労働者の正規雇用(終身雇用)化が労働コストの増大につながることを嫌った企業が、新労働契約法の施行前に一旦直接雇用の短期契約労働者の雇用を打ち切って、派遣労働者として再雇用するなどの行為に走ったことが社会的問題化し、一部の企業に対する反感を呼んでいる。
● 新労働契約法は、不法労働者、メイド、保険勧誘員、請負業者、フリーターなどをカバーしていないことから、雇用の多様化に充分対応しているとはいえない状況にある。
● 関連法としては、就業促進法と労使関係調整法が昨年成立している。今後は、労働者派遣法と社会保険法の立法化が予定されている。
質疑・意見交換
● 解雇に関する43条に、労働組合への事前通知が定められているが、中華全国総工会がどこまで労働者保護の機能を果たすが疑問がある。労働者が不当解雇として企業を訴えることができるが、総工会を含めた三者の調整を企業内に設けることを狙っている。これに関して、労働者が総工会を訴えることも、今後あるかもしれない。
● 農村労働者の都市化は、戸籍を都市戸籍に移すことをさすのではなく、農民工として都市で仕事することである。しかし、北京や上海などの大都市では、既に戸籍の固定化を廃止し、農村からの流入者が移住することも可能となっている。これは、労働者の子弟の教育問題などへの配慮でもある。
● 食品産業では高技能を求める仕事が少なく、労働契約期間の短期化による正従業員化の影響は少ないと考える。食品工場の現場では、農村からの若い労働者の集団出稼ぎによる低技能の仕事が中心で、短期雇用で労働者の回転が早い。これら労働者は、工場内の寮に宿泊していることが多い。
● 課題は、結社の自由を認めない中での法改訂であり、真の意味での労働者の権利が保障されない点にある。

以上