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2004年度第4回運営委員会議事録(2004/04/12)

14-May-2004





2004年度第4回運営委員会報告
フード連合会議室で行われた標記委員会の報告を下記の通り致します。
(日 時)2004年4月12日(月) 15:00−18:10
     (第1部:15:15〜16:30、第2部:16:40〜18:10)
(出席者)増渕、藤江、長島、弥富(フード連合)、菅井、郷野、中野(UIゼンセン同盟)、
岡田、内田、小川(全国農団労)、秋山、伊勢(サービス連合)見里、高田(JCC事務局)、合計14名(敬称略)

<第1部>
報告事項
1. 海外労働学校準備状況
 2月に募集をかけ、22単組から33名の応募があり(フード連合:16、UIゼンセン:3、全国農団労:2、サービス連合:1)、事務局2名(見里および村上)を含め合計35名の団を組むこととなった。今回は初めて4産別そろっての参加となる。
 当初予定していたイギリスのナショナルセンターの労働組合会議(TUC)の訪問が、先方の都合により取りやめになったが、その他は予定通り実行する。イギリスでの「イギリスの雇用政策と組合の対応」、「企業の社会的責任(CSR)と組合の対応」を中心テーマに据えてプログラムを組んだ。
事前準備会は5月10日に実施するが、講師は国際運輸労連(ITF)アジア太平洋部長の和田氏にお願いした。

2. 争議支援・連帯活動
以下の争議に対する支援要請があり、抗議文・連帯文の送付や情報提供などの支援活動を行った。
● 前回報告した、ニューヨーク中央駅内のオイスターバーの争議に関し、3月1〜5日争議団が来日した。1日にJCC三役メンバーで懇談を行った他、オイスターバー品川店がオープンした3日には連合の協力を得て記者会見を行った。争議団は、この他に全労協の協力の下街頭行動などを実施し、JCCとの関係上問題が生じた。この件に関しては、今月末のIUF執行委員会時にHERE本部国際担当と再度確認の話し合いを持つ予定となっている。争議は3月25日解決し、翌26日(金)にストライキを解除した。HERE Local 100委員長とHERE本部国際担当の連名で感謝状が届いている。(HERE)
● アメリカの豚肉会社であるスミスフィールドがノースカロライナの屠殺場の組織化を認めていない件に関し、同社CEOに抗議文を3月16日付で送付した。(UFCW)
● ロシアのネスレの工場における安全衛生基準の向上と、解雇された組合リーダーの復職を求め、同社のCEOに対し抗議文を3月26日付で送付した。(ロシア・ネスレ労組)
● コロンビアのコカ・コーラにおいて、労働協約の更新にあたり組合の権利縮小を狙った提案が会社側からあった。これに対し抗議文を同社経営者に3月30日で送った。(SICO)
● カンボジアのホテルで、サービス料を従業員に配分するよう調停委員会の裁定が出されたにも拘わらず、同国の主だったホテルはサービス料の徴収を止めると一方的に公表し、4月5日からホテルの組合がストライキに入っている。ホテル経営者に対し即時サービス料の徴収を再開し、従業員に配分するよう求める抗議文を4月5日付で送付した。(CTSWF)

3. IUF会費、A/P地域活動基金納入実績
 毎年第1四半期に納入が義務付けられているIUF会費、およびA/P地域活動基金の納入を行った。送金時の為替レートは87.34\/CHF、83.24\/AU$であり、徴収レート(90\/CHF、85\/AUD)を下回ったため、合計で1,048,960円の為替差益が生じた。この為替差益は1999年度JCC運営委員会の確認に基づき、日本事務所口座にプールする。

4. 各組織報告
● フード連合:
イタリアの視察団:5月10〜20日、労働視察団をイタリア、スイスに派遣する。10名。IUFを通じてFLAIと連絡をとり、ローマ、パルマで2日半のプログラムを組んでもらった。イタリアには食品のIUF加盟組織が3つあるが、会費をきちんと払っている唯一の団体がFLAIである。帰りにスイスのIUFに寄り、IUF本部を訪問する。
グローバル製糖会議:5月19〜20日にドイツで同会議が開催され、フード連合の糖業部会を中心に5名の代表団を派遣する。また、ドイツの食品労組NGGの砂糖労働者代表との交流も予定している。
韓国化学労組交流:定期交流を行っている韓国化学労組を、5月10〜13日の日程で3名の代表団が訪問する。
中国食品労組の交流:中国の食品労組の交流をスタートさせるために、6月に中国をフード連合として始めて訪問し、今後の関係構築の準備を行う。
● UIゼンセン同盟:
日米繊維労組交流:4月20−22日、アメリカの繊維労組UNITEが来日し、合同会議を開催する。UNITEはホテル・レストラン労組のHEREと合併する団体。
中国労組との交流:7月18〜23日、トップクラスの代表団を中国に派遣し、2年に1回実施している中国の繊維・食品・商業・タバコ労組との交流を行う。同組織は繊維を中心とした組織と商業労組が合併したもので、UIゼンセンとしては化学を除けば、ほぼ同じ産業範囲をカバーしているカウンターパートである。
在日ビルマ人労組支援:ホテル・レストラン一般労働組合(ビルマ)の代表と3月31日に会合を持ち、同労組の法人登録支援と、ビルマに帰国した時のためにノウハウ伝授を依頼された。既に法人登記などに必要な資料を提供した。一方で、同労組から分裂した一般労働組合からも組合を立ち上げたのでという連絡があり、双方との関係のとり方に戸惑っている。UIゼンセンとしてのスタンスは、FTUBおよびビルマ事務所との関係を重視することである。

5. 今後の予定
● パキスタン・アウトリーチ・プロジェクト関連会議:2004年4月14−16日、カラチ、PILER
1997年に立ち上げた同プロジェクトの最初の目に見える成果が、昨年の砂糖労組連合の結成であった。14日にはホテル労組連合の結成大会が開催される。これはプロジェクトの2番目の成果といえる。15−16日は食品飲料労組の全国会議が開催される。各労組は産別組織がない中で、9つのナショナルセンターに別々に加盟しているため、従来相互の連絡が無かった。今後の産別組織結成に結びつく機会となる事を期待する。
● タイ食品労組結成大会:2004年4月18日、バンコク
● 農業部会(AWTG)委員会:2004年4月26日、ジュネーブ国際会議場
● IUF女性委員会:2004年4月26日、ジュネーブ国際会議
● IUF三役会:2004年4月27日、ジュネーブ国際会議
● IUF執行委員会:2004年4月28〜29日、ジュネーブ国際会議
● 国際労災犠牲者追悼日:4月28日
● メーデー:5月1日
● A/P会計監査・マ・ウェイ・ピン地域書記来日:5月12〜14日
● JCC三役会・第5回運営委員会:2004年5月12日、味の素労働組合会議室

6. その他
● コカ・コーラ・カンパニーとIUFとの少人数チームの会議の第二回が4月の第二週に開催される予定だったが延期となった。CCC内の人事の変更が理由と推測されているが、現段階で次がいつ開催されるか決まっていない。第1回目の会合でUIゼンセン同盟の滝田さんから出されたリクエスト(@CCJCと日本のボトラーの利益バランスがここ数年で急速にCCJC側に偏ってきていることに対するCCCの考えの表明、ACCJCとボトラーとの協議会の設置)の返答がCCJCからきたが、否定的なものであった。今までのCCCとIUFとの少人数チームの会合開催に至る経緯やその後の対応から距離感のある返答であり、CCJCに再度こうした背景をきちんと説明した上で再考を願うよう、IUF本部からCCCに申し入れるよう依頼した。
● A/P女性委員の北東アジア小地域の母性保護に関するワークショップが5月に予定されていたが、資金支援の申請をしていたILOから返事が遅れており、延期することになった。今後のスケジュールをA/P書記局に確認するとともに、充分な通達期間を取れるよう配慮するよう申し入れる。

協議事項
1. IUF執行委員会に向けて
4月28〜29日にジュネーブの国際会議場でIUF執行委員会が開催され、増渕議長、菅井副議長、秋山副議長、フード連合全たばこ労組谷田部氏、サービス連合西山氏が出席する。今回は、通常の議題項目の他に、WTOのスタッフを迎えて、農業および観光産業の貿易に関するパネルディスカッションが行われる。
IUF-JCCからは、昨今の食肉産業の問題(BSE、鳥インフルエンザ)を取り上げた決議案を提起する事を決め、3月から決議の文案を組織的に検討し、当運営委員会にて決議案の最終文書を確認した。
(1) 鳥インフルエンザに関する決議案
鳥インフルエンザの広範囲な影響に対する懸念の表明と、風評被害が深刻化していることに留意して、感染ルートの解明および感染拡大のための適切な対策、更には風評被害を予防するための正しい知識の普及を求める決議案を提起する。
ワクチンは発祥を抑えることができるが感染を抑えることはできないといわれている。また、逆に感染ルートの特定を困難にしてしまうという説もある。現時点で科学的に正解が無いので、ワクチンに関しては決議案に触れないこととする。
(2) BSEに関する決議案
BSEが拡大していることの懸念を表明し、発症原因の解明、感染ルートの特定、牛の固体管理の実施、特定危険部位(SRM)除去技術の普及を各国政府に求めるとともに、国際獣疫事務局に対し、ヤコブ病との関連解明や「BSE世界安全基準」の作成を求める決議案を提起する。
現在日米間で問題となっている全頭検査に関しては、充分な科学的憲章がされているとは言えないので、言及しないこととした。また有機畜産に関しても現段階でコンセンサスを得ることはできないと判断し、除外した。
(3) WTOに関するパネルディスカッション
農業貿易と観光産業をテーマにWTO事務局スタッフを招いてパネルディスカッションが行われるが、現段階で彼らの主張点が判らないので、執行委員会出席者に対応を一任することとする。
(4) その他
 A/P地域報告では、昨年7月に実施されたインドネシア・ミッションの詳細報告書が無いまま、サマリーのみが報告されることになっている。貴重な金と時間を使って、重要なIUFとしてのインドネシアにおける活動方針を決めるものであり、ミッションから9ヶ月経過しているにも拘わらず報告書が出てこないのは納得しかねる、との意見が出された。この件に関しては、執行委員会前に事務局長から地域書記に申し入れることとする。

<第2部>
農業貿易に関する全国農団労の政策
農業貿易、特に自由貿易協定(FTA)に関する全国農団労の考え方を、同組織の小川書記次長よりご紹介いただき、その後フリーディスカッションを行った。

<全国農団労の考え方>
1. FTA交渉の監視
@ 協同研究会(産・学・政)に労働組合の参画を実現させる
A 交渉相手国の労働者・労働組合(IUF加盟組織)との情報交換を推進する
2. 労働者や農民の利益を守るためのルール策定
@ ILOの中核的条約を最低基準としてクリアする事を条件に入れる事を要求する
A 農業(農園)労働者の安全衛生のガイドラインを作成し、これを条件として入れる事を要求する
3. 日本の安全基準の維持
@ 各国の実情に合った安全基準を尊重する
A 日本の安全基準に合わせるための、輸出国への技術支援を実施する

<フリーディスカッション>
1. FTAに伴う人の移動の自由化に関して
Ø 国内的課題
● 既に1999年、当時の日経連が行った東南アジアを中心とした奥田ミッションで、経営団体は人の自由な移動を約束している。しかし、現実的には日本は人材の輸出はできず一方的な受入国となるが、低賃金の労働力の流入によって現在パートやフリーターなどが就いている職種が脅かされるだけでなく、全体的な労働コストの引き下げが懸念される。
● ドイツなどは強力な組合の存在もあり、ドイツ人がやりたがらない職種をトルコ人や東欧諸国の移民が担うなどの職の棲み分けができている。こうした論議がなされていない中では、非常に危険な状況に陥る可能性が高い。日本も連合が中心になってこの問題を国家的論議に押し上げていくべきである。
● 少子高齢化、ワークシェアリング、あるべき賃金水準と社会福祉、外国人労働者、などの問題の論議には、今後日本という社会をどうしていくべきかという、国家ビジョンが不可欠である。これは政治の問題であるが、労働組合も積極的に発信すべき課題である。
● 現在も違法就労が存在しているが、社会福祉や賃金の問題など課題が多い。これらの問題に対する関連各省庁の対応はまちまちであり、整合性がとれていない。これも国家ビジョンが欠落しているためである。
● 単純労働者の受け入れが可能になると、ホテル産業も一番に影響を受けるであろう。
Ø グローバルな課題
● アフリカなどでは、医師や看護婦などの高技術・高技能を持った人材が、西欧諸国に職を求めて出て行く現象が起きている。このような途上国のエリート人材流出によって、せっかく育てた人材を失い、途上国はいつまでたっても貧困から抜け出す機会を持てないという悪循環にある。アジアでもフィリピンなどで同様の現象が起きている。新しい形の南北問題であり、グローバル社会としての開発ビジョンを描き、問題解決に各国が取り組む必要がある。
2. 農業貿易に関して
Ø 途上国の問題
● 途上国の伝統的主食の生産を破壊し、先進国のための換金作物へ生産がシフトすることによる、伝統的農業国が農作物輸入国になってしまう問題の懸念とともに、先進国の補助金付の農産物輸出が途上国の農業を席巻し、新たな経済的植民地化の問題をIUFとしても大いに問題視している。基本的にはJCCも同様の問題意識を共有している。
● 特に途上国の農業労働者は搾取の対象となりやすいので、フェア・トレードという観点が重要である。フェア・トレード運動をきちんとモニターする必要があるであろう。特に、ILOの基本条約を取り入れた仕組みが必要である。
● 若干、現在のILOに対する日本の姿勢に問題を感じる。
Ø 安全基準
● 独自の安全基準は非関税障壁として非難を受けるが、その国の気候・風土や食慣習が違う中で、一律の基準が絶対的であることの方が科学的根拠に欠ける場合が多い。独自の文化の中から独自の基準が生まれているので、それを尊重すべきである。
3. IUFとしてできる取組
Ø 農業分野での取組
● コメの協同備蓄といったユニークな提案がされているが、従来からの全国農団労のアイディアであるシードバンクの設立とあわせて、同じモンスーン文化圏の稲作文化を共有するアジアで、このような論議を行い、技術維持や安全保障体制を構築していくことは意義深いと考える。
● 一方で、日本の技術を近隣諸国に伝授したことにより、その技術で安い製品を日本に輸出されると、日本の産業が壊滅的な打撃を受けることも懸念されるので、注意深い議論が必要でもある。かつて同様の事を繊維産業で経験しているし、2年前の中国野菜の暫定セーフガード発令も同様の問題である。
Ø 一般分野での取組
● FTA交渉相手国の組合との情報交換は重要であると考える。以前、日韓自由投資協定が政府間で論議された際、ナショナルセンター・レベルで話し合いの場を持たれたが、韓国の2つのナショナルセンターはどちらも、新たなる日本の植民地主義の現れであると態度を硬化させ、議論にならなかった。このようにナショナルセンター・レベルでは政治的になりすぎるが、IUF加盟組織レベル(産別組織レベル)で意見交換をし、相互理解の下地を作ることが重要であると考える。