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2004年度第3回運営委員会議事録(2004/1/30)

16-Feb-2004





2004年度第3回運営委員会報告
味の素労働組合会議室で行われた標記委員会の報告を下記の通り致します。
(日 時)2004年1月30日(金) 14:00−17:30
     (第1部:14:00〜15:15、第2部:15:30〜17:30)
(出席者)増渕、藤江、弥富(フード連合)、大出、成田(UIゼンセン同盟)、
岡田、内田、小川(全国農団労)、見里、高田(JCC事務局)、合計10名(敬称略)
(第2部のみ)
茶園<日本製粉労組>、永松、増田、畑中、山村<東日本精糖労組>(フード連合)

<第1部>
報告事項
1. タバコ部会(TWTG)委員会報告
 表記会議が1月19~20日ポルトガルのリスボンで開催され、フード連合全たばこ労組の畑木書記長、石丸四国地本委員長、草刈九州地本委員長、JCC見里が出席した。会議は畑木氏が議長を務めて行われた。
 産業界の動向、IUFおよび加盟組織の活動報告、TWTGコンサルタントのダン・プラウム氏が作成管理するデータベースの最新情報などを共有した後、昨年から懸案となっていたタバコ産業の社会憲章作成に向けた手続きを確認した。昨年提起された社会憲章に関する書記局からの問いに、4月末までの期限で再度各加盟組織に回答を提出してもらい、次回会合までに書記局で文章を作成することとなった。
 次回は、部会総会とすべく、書記局にて日程と場所を調整することが確認された。

2. 争議支援・連帯活動
以下の争議に対する支援要請があり、抗議文・連帯文の送付や情報提供などの支援活動を行った。
● 韓国の外国人労働者のための労働組合(ETU-MB)に対する政府の弾圧を批判する抗議文を、労働関連ウェブサイトであるLabourStartを通じて送った。(ETU-MB)
● ニューヨーク中央駅内のオイスターバーで団体交渉が暗礁に乗り入れているが、同社が日本に進出計画を持っており、日本におけるパートナー企業であるWDIに対し、在米のオイスター・バーの株主に圧力をかけるよう要請した。(HERE)
この件に関しては、HEREより来日して何らかの行動をとりたいとの意向が示されている。関係組織と協議の上、対処する。

3. 各組織報告
● フード連合:1月26日に中央委員会を開催。@春闘方針として「賃金カーブの確保」以上とし、賃金カーブ確保の算出が困難なときには「2%、5000円」以上を要求、またパートタイマーを含めた企業内最低賃金の協定化や労働時間管理の徹底、職場点検活動などを同時に行う、A政治方針の決定、B第20回参議院選挙における組織推薦の確認、C共済制度の一部改定、などを決定した。
● フード連合全たばこ労組が、交流を行っている韓国人参たばこ労組を、増渕委員長を団長とした5名で2月16-20日訪問する。 同労組は全たばこ労組の働きかけによって、昨年IUF再加盟を果たしたが、会費納入など加盟手続きが完了していない。交流時に、この問題を挙げて、手続きを行うよう促す予定。
● UIゼンセン同盟:2月3日に中央委員会を浜松にて開催する。
● 全国農団労:2月6-7日、中央委員会を都内にて行う。
● サービス連合:本日(1月30日)中央委員会開催しており、本日の運営委員会に欠席している。

4. 今後の予定
● シンポジウム「日本の難民受け入れのこれから」:2004年2月7日、新宿ハーモニックホール
● JCC三役会:2004年2月10日
● IUF会費およびA/P地域活動基金徴収:2月中
● 海外労働学校応募受付:2月中
● 国際女性デー:3月8日
● JCC三役会・第4回運営委員会:2004年4月12日、味の素労働組合会議室

● 北東アジア小地域女性ワークショップを5月に香港で開催予定。日本からも数人出席していただくよう、各加盟組織にお願いする。

協議事項
1. IUF会費およびA/P地域活動基金の徴収に関して
毎年第1四半期に送付することになっているIUF会費およびA/P地域活動基金の徴収を行う。2004年度のIUF会費は2.20スイスフラン、地域活動基金は例年どおり0.4オーストラリアドルであるが、為替レートをそれぞれ90\/CHF、85\/A$に設定して徴収することが承認された。本運営委員会での承認を受け、各加盟組織に請求書を発行する。2月末までに指定口座に振り込んでいただきたい。

2. 海外労働学校の企画に関して
 2004年5月19-30日にジュネーブおよびイギリスで第28回海外労働学校を実施に関する募集要項が審議され、承認された。
 ジュネーブでは、ILO、国連欧州本部、IUF本部などの訪問、イギリスではT&G研修施設での労働講義、工場見学、食品市場視察、組合訪問(TUC、T&G)、T&G職場委員との意見交換などを企画する。特に労働講義ではイギリスの労働運動全般の勉強の他、雇用政策に関した集中的な講義を受ける。
 募集人数は30名とし、参加費用は1人あたり36万円とする。申し込みは2月27日(金)必着とする。
過去からの経緯より、募集人員を大幅に越えることも予測される。手配可能な人数を超えた場合は、その時に調整する。

3. その他
● NGO-労働組合国際協働フォーラムに関して
前回運営委員会で報告したように、現在表記フォーラム立ち上げのための準備として企画委員会の論議が行われている。ここまでの経緯に関しては、1月25日発行の「IUF-JCC News」をご参照いただきたい。IUF-JCCからも見里事務局長が企画委員となっているので、今後の論議に関して本運営委員会で意見を伺った。
Ø 協働のイメージが見えないという意見があった。これに関しては、労働組合が取り組む国際協力分野で専門的に活動しているNGOと協力するということであり、IUFでは児童労働への取組や、農村開発的な活動がこうした協働可能な分野と考える。
Ø 従来から組合のボランティア活動などで、学校建設や教材支援などの教育プロジェクトや、植林活動などで、専門的ノウハウを持ったNGOの協力を得てやってきた。
Ø 今回のフォーラムでは、ボランティア活動ではなく、労働組合の課題として取り組む国際開発の課題や、政府機関や国際機関に対する政策提言などが中心となってくる。
Ø 現在、企画委員会では具体的取組として、@児童労働、AHIV/AIDS、BODAなどに関する政府への政策提言、が挙げられている。
Ø フォーラムとして会費を徴収するという案が論議されている。労働組合が単にお金を期待されるだけ、ということにならないように留意してほしい。
Ø 企画委員の人選などを見ていると、組織的な動きというよりもキーパーソンの一本釣り的であり、組織的なコンセンサス形成に課題があるように見受けられる。連合でも執行委員会などで論議されているのか、動きが良く見えない。学習会なら良いが、会費を徴収するフォーラムであれば、きちんとした対応を願う。
Ø 今後の論議は、経緯や論点を書面にして提示する。


第2部
<勉強会> 農業貿易の現状と日本政府の方針
現在、国際貿易において農産物の取り扱いが大きな課題となっている。WTOにおける交渉から2国間、地域内、地域間の個別の自由貿易協定(FTA)へと交渉の場が移る中で、日本のおかれている現状と、今後予定されているFTA交渉に向けた日本政府の方針を、農林水産省国際部国際調整課、地域調整室長の梶島氏をお招きしてお聞きした。

● WTOとFTA
Ø WTOの貿易協定はWTO加盟148カ国が共通のルールを定める、差別を廃した平等なもの(最恵国待遇)であるが、2つの例外がある。一つが開発途上国に対するものであり、特に最貧国(LDC)に対する関税0化するなどの配慮がされている。二つ目がFTAであり、特定の国・地域に限定した協定となっている。要するに、WTOが共通の土台作りであるとすれば、FTAは共通の土台の上に築かれる個別の枠組みである。
Ø FTAはWTO設立前のGATTによって規定されており、GATT24条に定められたものである。WTOの多角的貿易体制を補完する役割を持っている。
Ø WTOは関税の削減を主な交渉事項としているのに対し、FTAは関税の撤廃交渉を原則としており、実質的に総ての品目を対象に10年以内の関税撤廃を実施することになる。

● FTAの交渉
Ø FTAの対象は物の貿易だけではなく、投資、サービス、政府調達、知的所有権、競争政策、人の移動なども含まれる。また、ニュー・イシューとして、労働問題、環境問題、協力などが交渉に含まれるようになっている。
Ø 「実質的に総ての品目」からの除外品目の設定、関税撤廃までの期間、基礎となる関税ベース・レート、セーフ・ガードの設定、他国産が当該国を経由して流入する事を禁ずる原産地規則、関税撤廃の量的上限を設定する枠、などが交渉事項となる。
Ø 日本の交渉は、外務省、経済産業省、財務省、農林水産省が、共同議長省としてあたっている。経済通産省は、FTAがないことによって不利益をこうむっている国を優先的に交渉を進めたいと考えており、メキシコがその一例である。
Ø 交渉に先立って産学官共同研究会を開催し、利害の調整や課題の整理などの意見を諮問している。農業分野では全農が参加しているし、日本経団連や商工会議所なども研究会のメンバーとなっているが、労働界や消費者がこれに含まれていない。

● 世界のFTAの状況
Ø EUはそれ自体がGATT24条に規定された一つのFTAである。共通の議会を置き、一つの国のように振舞う、FTAの究極の姿である。今年5月から15カ国から25カ国に拡大され、巨大なFTA圏が誕生する。EUはこのような東方拡大と共に、旧来から植民地経営として関わって来たアフリカとの協定が中心となっている。
Ø アメリカは元来FTA後進国であった。北米自由貿易協定は、アメリカ/カナダ、カナダ/メキシコ、メキシコ/アメリカの、それぞれ3カ国同士の協定から構成される。現在は、アメリカが従来自国の裏庭と考えている中南米の囲い込みとして、米州自由貿易協定(FTAA)構想が進んでいる。
Ø 韓国では、秘密裏に交渉を進めてきたために、国民が猛反対している。おそらく2月の国会で強行採決するものと予測される。
Ø 日本は、今までFTAは経済のブロック化を促進し、WTOの多国間交渉を逆行させるとして、外務省、経済通産省とも反対していたが、ここ1,2年の中でFTAが貿易交渉の主流になると、実利を取る方向に政策を転換し、FTA交渉を積極的に進めるようになった。
Ø 日本にとってアメリカに次ぐ重要な貿易相手はASEANであるが、従来はODAを介してASEAN諸国に影響力を行使してきた。しかし、ASEAN諸国の開発が進んできたことに加え、中国とインドがASEANとのFTA交渉に入る合意がされたことで、日本が取り残される危機感から、ようやく動き出した。

● 実際の交渉にあたって
Ø 経済産業省は、特に投資に力を入れているが、海外投資が今以上に進むと、国内産業の空洞化が深刻になる懸念がある。中長期的に見て、何が国民にとっての利益か見極めるとともに、国民に対して説明する必要がある。
Ø オーストラリアは日本とFTAを結びたいと考えているが、日本はあまりメリットがないので拒否している。このように、FTAは片想いでは成立しない。FTAは経済を基本としているが、特定の国と特別な関係を構築することなので、相手国の文化を含めて国民が理解する必要がある。
Ø 農業貿易の交渉では、単に農産物の貿易だけでは日本にメリットはない。労働力や経営としての人材の供給、農作物の安定供給という点と、消費者から見た安価の食物の提供にメリットがある。

<主なQ&A>
Q1. 日本は輸出によって栄えてきたが、その見返りが農作物の輸入となっている。現在日本の食料の自給率はカロリー・ベースで40%であり、これを向上させる事を目標としているが、FTAは自給率にどのような影響を与えるか?

A1. FTAというのは相手1カ国のみに有効であり1カ国分だけの影響であり、世界全体からの輸入を考えると、自給率に大きな影響を与えるものではないと考える。あくまでも日本の農業の目標は生産性向上であり、自給率はその結果としての指標である。

Q2. 交渉相手国より日本の検疫が厳しいとの指摘がされている。しかし消費者は、職の安全・安心につながる厳格な検疫を望んでおり、相手国の主張に反感を持っている事を、マスコミなどを通じて伝えてはどうか?

A2. 相手国の状況を理解しながら、安全や衛生の基準を向上させるように促している。当初は日本に対し安全基準の引き下げ要求などがあったのは事実であるが、最近は日本の安全基準に対する理解も示されるようになってきた。

Q3. 食品の安全性という観点では、国会で民主党の鮫島議員も提起したような海外検査院の派遣を検討してはどうか?

A3. 検疫は日本に輸入される際に日本で行われるのが基本である。常駐の検疫官を相手国に置くことは、相手国の主権に関わることである。アメリカとカナダの場合は、一部主権を放棄してこうした検疫を行っている例はある。但し、個別の物品の検査を行うための検査員の派遣はある。この場合は、相手国の輸出企業の経費で駐在することになる。

Q4. 労働組合は、WTOやFTAの交渉の際に、中核的労働基準などの社会条項を盛り込み、ソーシャル・ダンピングを阻止するよう求めているが、現段階では聞き入れられていない。これは、産学官共同研究会に労働組合が除外されていることが一つの原因とも考えられるが、これについてコメントを頂きたい。

A4. 労働問題は交渉のニュー・イシューとして課題となってはいる。しかし、中核的労働基準の論議はしたことはない。産学官共同研究会に関しては、労働組合も重要なステークホルダーであるので、産業界代表として出席することはできると考える。