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Uniting Food, Farm and Hotel Workers World-Wide


カリフォルニア、スーパーマーケットのストライキ、争点は何か?

Posted to the IUF website 22-Dec-2003





最近起こったスーパーマーケットの争議には7万名の従業員(IUFのUFCW加盟人員)が関わっている。まず第一に、これは近年起こった数少ない大規模労働争議のひとつである。米国では従業員が賃金および手当てに関してストライキを行うと、使用者はこれを補充するために常用職員を雇用することが許されている。米国は、ストライキを行う従業員の職を埋めるために会社が常用職員を雇うことができる数少ない民主主義国で、この極端な手段がなんのも規制なしに行われている唯一の国である。従業員が雇用喪失を恐れる結果、米国で大規模なストライキが起こるのはめずらしくなった。1000名以上の従業員が関与する作業停止件数は1977年の298件から2002年には19件と減少し、1億3700万の労働人口に対比すると顕著に少ない数である。スーパーマーケットの場合、作業停止の増加件数は、守りのストライキであり、従業員が現行の賃金・手当てを守ろうとするものである。

このストライキの第2の争点は、健康保険コストの高騰と経営者がこのコストを従業員に転じようとすることであるが、これは多くのアメリカ人が影響を受けている問題である。カリフォルニアの600万名を含め、4300万以上のアメリカ人は健康保険を持たない。何百万もの人は、一部保険にしか入っていないか、そうでなければ現行の保険範囲を失うかもしれないと恐れて生活している。もしスーパーマーケットのオーナーが勝てば、従業員は健康保険料を約50%多く払わなければならなくなるが、相当数の労働者はこれを負担することができない。もしこれらの労働者が経営者の提供する健康保険から締め出されれば、納税者が実質この負担を負うことになる。というのはこれらの労働者は米国全域にある緊急治療室で医療を受ける事を強いられるからである。

以前にはスーパーマーケット産業の規範であった経営者と組織化された従業員の間の協調的団体交渉は戦後のアメリカで最大のかつ最も成功した反貧困計画であった。このために何千万もの労働者が社会水準にあった賃金と健康保険を手にし、子供に高等教育を受けさせ、落ち着いた定年退職を迎えることができた。サービス部門では、米国食品商業労組(UFCW)、サービス従業員国際労組(SEIU)、ホテル・レストラン従業員国際労組(HERE)が、何百万もの小売、ヘルスケア、ビル管理人、接客部門の労働者階層のアメリカ人にRalphsやアルバートソンズやVonsで働く労働者と同様の社会水準に見合った賃金、健康保険、年金を勝ち取らせたのである。

しかし近年、困難の中勝ち取ってきたこれらのものが脅威にさらされている。アメリカの使用者は、組合のない職場を求めて、また健康保険、年金コストを従業員に転じようと攻撃の度を強めている。最近起こったスーパーマーケットの争議では、争議にもかかわらず食料品店経営者は巨額の利益を記録し続けた。Vonsを所有するセーフウェイは、昨年100億ドル以上の利益を上げた。セーフウェイの最高経営責任者スチーヴン・バード(ジョージ・ブッシュのトップ基金調達者の一人)は、ストライキを『我々の将来への投資』と呼び、−これは彼が良く理解するものであるが、9月3日から10月14日の間に会社の株式30万株を売り払い、520万ドル稼いだ。バードのような企業経営者は、従業員が組織化しようという努力に対し精力的に戦い、契約の交渉においては賃金の譲歩、またこれは増加しているが健康保険、年金の譲歩を要求してきた。この結果、結社の自由が常に侵害され、組織率が急激に落ち込み、何百万ものアメリカ人が労働市場の良くない側にはまり込み、貧困賃金で、ほとんど手当てなしに働いている。

スーパーマーケットの部門では、ウォールマートがこの「低い道」ノンユニオン戦略を典型的に示している。ウォールマートの80万を越える(合法も違法も合わせ)労働者は、組織化された小売業労働者と比べると賃金も手当ても相当低い。Ralphs、アルバートソンズ、Vonsは、ウォールマートのような「低い道」のライバルと競争するために高騰する従業員健康保険を再配分する必要があると主張している。しかし、ウォールマートがカリフォルニアの大都市エリアに移動するならば、市議会はおそらくこの世界最大のまた最も利益を上げている小売業者にアメリカの他の地域で通常出している貧困賃金と標準以下の手当てではなく、この地域で一般に払われている賃金を支払うことを求めるだろう。

スーパーマーケットのストライキは単に会社と労働者の争議ではない。これは低賃金労働の将来だけでなく、我々全員に影響する問題である。この争議やこれに類似した争議の結果いかんにより、アメリカ中産階級の生存能力を決定することになる。全般に社会水準並みの賃金と手当てが払われる組織化された職とRalphs,アルバートソンズ、Vonsなどの影響力のある経営者が存在しなければ、我々は、持てるものと持たざるものの2極化した機能を果たさない社会に容赦なく向かうことになる。これらの企業が従業員の健康保険を骨抜きにすることに成功するならば、我々は「ウォールマート国家」になることに一歩近づくことになる。

ジョン・ローガンによる客員論評。2003年11月11日付けサンタモニカ・ディリープレス

(ジョン・ローガンはロンドンスクール・オブ・エコノミックスの労使関係部門で教鞭を取る。労使関係に関する彼の論文は米国、英国、カナダのいくつかの主要な学術機関紙に掲載されている。現在同氏はUCLAの客員研究員。サンタモニカ在住。)